情報支援レスキュー隊 / IT DART (Disaster Assistance and Response Team)

災害時には準備を、そして平時に活動を

投稿者:SatoDai - 2015/12/05

この記事は、IT DARTアドベントカレンダー 2015 の5日目です。

プログラミングの腕を生かして災害で困っている人達を助けたい!という方に向けた、IT DART 佐藤大からのご提案です。


何でもやりますよ!

ある災害が発生したときに「何かしたい、手伝いたい」と感じたとします。

被災地の皆さん向けのアプリだとなかなか難しそうなので、支援をしている人達向けのツールを考えてみましょうか。実際、ちょっとしたツールを作るだけで作業効率がすごく上がりそうな気がします。でも突然飛び込んでいっても、何を作れば良いか分からなかったり、受け入れてもらえなかったり、急に上手くいくものでもありません。

「作業を効率化するツール作りますよ!」
「要望があれば何でも言って下さい!」

…って言ってるのに、誰も何も頼んでくれないなぁ。
手伝うって言ってるのになぁ。

なんていうのは、ちょっと寂しいけど、まぁありがちな光景です。
でも、なんでこうなるんですかね?

アドリブだらけの災害現場

災害の現場で動いてると、基本的にいろんなことがアドリブです。何度か同じようなことが起こると、前にやったアドリブと同じようなアドリブで対応します。それはルーチンっぽく見えるかも知れないけど結局はアドリブで、その場その場で機転をフルに利かせてなんとか凌いでることが結構あります。

ときには「お願い話しかけないで」モードなのに質問されたり電話が来たりで、いろんなことをやり忘れながらアドリブでいろいろこなしてます。やり忘れが多いので、そのフォローもアドリブで対応するハメになって、そのフォローしてるうちにもまたアレやコレをやり忘れます。

こういう状態のときに「何やればいいですか?」とか聞かれても、課題を整理してまともに答えたり、ましてやそのやり方を教えたりする余裕がないんですよね。良く知らない人に言われたなら尚更です。

さて、じゃぁどうしましょう?

今すぐにできること

何はともあれ、いったんツール開発のことは置いといて、目の前の人達が困ってそうなことを自主的に手伝ってみてはどうでしょうか。

それは災害ボランティアセンターからコンビニへの買い出しかもしれないし、支援グループの事務所で支援物資の段ボール箱の片付けかも知れません。Facebook 上で見かけた質問への回答や Q&A リストの作成かもしれないし、twitter で見つけた情報のまとめ作りかも知れません。

そんなことをしているうちに、名前や顔をきっと覚えてもらえます。現場の人達がどんな状況でどんなリズムで動いているのかも、少しずつ分かってくると思います。そしてツール開発のネタになりそうな作業上の課題が、いくつか見えてくるかも知れません。

プログラミングの腕を振るうチャンスが全然なくてストレスフルかも知れませんが、たいていの場合は災害時にできるのはここまでです。でもこれは、次の災害に向けた準備としてとても有効です。

発明のアイデア

その後状況が落ち着いたら、顔見知りになった現場の人と作業上の課題について聞いてみてください。災害対応中よりも、そして知らない人だった頃より、ずっとまともな返事が返ってくるはずです。もっとも、ただ「どういうツールが必要ですか?」と聞いてみても、

「こういう項目のデータを登録してこういうビューで見せて!」
「こういうフローの定型業務があるから、ここからあそこへの情報提供を自動化して!」

みたいな回答は、なかなか期待できません。ツール開発に慣れてない人にとってのこの質問は、「新しい発明するからアイデア出して!」とほぼ同義で、とても難しいんです。
なので代わりに、

「こんなの作ってみたけど使ってみて!」

にしてみましょう。何を作ってみるかは、災害時の現場で見かけた課題からピックアップできるはずです。勝手にプロトタイプを作ってみて、提案してみましょう。採用率はそれほど高くないかも知れませんが、まぁそんなもんです。いくつも提案しているうちに「それだったらもうちょっとこんな感じの機能があった方が良い」とか、相手のイメージが固まってくるかも知れません。

普段の備えが重要!…とは言うけれど

こんな風に、災害対応が落ち着いて次の災害が発生するまでの『平時』が、ツール開発作業の本番です。要件定義や設計、コーディングなどを進めるのはもちろん、動くようになったツールを現場の人に使ってみてもらってフィードバックをもらったり、使い方に慣れてもらったりするのも『平時』のうちに進めましょう。現場側では「次はこのツールを使ってこう動くぞ!」というルール化も必要です。やることは結構いっぱいあります。

結論:次の災害に備えて、普段から準備しておきましょう!

…というのはまぁ正論なんですが、普通は『平時』に突然「オレ災害対応やる!」なんて思ったりしませんよね。だから、ある災害を見て「オレやる!」と思った時に、すぐできることをやりつつ、次の災害に向けた準備を進めましょう。

それでも今やりたい

…ですよね。そういうもんですよね。

そんな場合は、上記のような経験を積んでいる人達と一緒に動くのがお勧めです。そのような組織のいくつかは、及川の 12/2 の記事12/3 の記事でも紹介されているので、参考にして下さい。他にもいろいろあるので「こんな団体ありませんかね?」と聞いてみるのも良いと思います。

何にせよ、「オレやる!」と思ったことはとても貴重なので、それが形にならずに終わってしまうのは勿体なさすぎます。ここはひとつ貪欲に、自分の思いをぶつけてみて下さい。災害支援に動くエンジニアは、実はなかなか貴重です。「オレやる!」と思ったあなたは、きっとあちこちで歓迎されます。

人生は短い

『○十年・○百年に一度の大災害』がどうしても話題になりやすいですが、それだけをターゲットにすると、一生に一度のぶっつけ本番になってしまいます。より小さな災害は毎年何度も発生していて、規模が小さいとはいえ多くの人が生活に困っています。まずはそういう現場の支援をしながら、ともに経験値を上げていきましょう。