情報支援レスキュー隊 / IT DART (Disaster Assistance and Response Team)

関東・東北豪雨水害での活動を振り返って(前編)

投稿者:MiyagawaShoko - 2015/12/11

みなさん、こんにちは。IT DART代表理事の宮川です。好きな言語はPrologとLISPです。

今日のIT DART Advent Calendarは、「平成27年9月関東・東北豪雨災害報告会」の内容についてレポートします。

平成27年9月関東・東北豪雨災害報告会は、昨日2015/12/10、恵比寿の一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラムの事務所をお借りして開催しました。IT DART理事で、京都大学防災研究所の畑山満則さんの司会ではじまりました。

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行政への支援は重要だけれども、どうやって入るかが課題

トップバッターはIT DART運営委員で、茨城県広報監の取出新吾さん。

守谷市では水害による行政ネットワーク障害のため、ホームページが更新できず、SNSで情報発信をしていました。IT DARTチームは、守谷市役所を訪問し、暫定的な情報発信を行うためのホームページを作成しました。また、市役所にWiMAXルータを暫定設置して、インターネットへの接続性を提供しました。結果的に、その後まもなく行政ネットワークが復旧し、IT DARTで用意した暫定ホームページは使われませんでしたが、守谷市の担当者からは感謝の言葉をいただきました。

IT DARTとしても、面目躍如といったところですが、一方で、このような行政への支援を行う際の課題も見えてきました。守谷市の担当者からも、今回のようなIT支援を守谷市が受け入れることができたのは、取出さんの紹介があったことが大きい。一般論で言えば、素性のよくわからない団体からの支援の申し出を行政が受け入れることは難しいだろうというコメントをいただきました。

IT DARTとしては、最も強化しなければならない項目の一つですが、たとえば以下のようなものがあれば、自治体としても受け入れやすくなるのでは(あくまでも必要条件で、十分条件ではありませんが)、という提案で締めくくられました。

・どのような支援を提供できるかの基本メニュー

・他の自治体への支援実績

・他の自治体との協定

・プリンター出力ではなく印刷物の団体資料

災害ボランティアセンターのIT支援はかゆいところに手の届く情報発信で

続いてはIT DART理事で神奈川災害ボランティアネットワークの上村貴広さんと、同じく理事で一般社団法人災害IT支援ネットワークの柴田哲史さんより、常総市災害ボランティアセンターにおけるIT支援についての報告です。

被災した地域に開設される災害ボランティアセンターは、ボランティアの受付と割り振りを行う、要となる場所です。今回の水害は、特に被害の報道が多く、かつ都内からアクセスの良い常総市には多くのボランティアが集中し、そのための渋滞で交通に支障が出るほどでした。来てくださったボランティアにいかに効率よく作業をしていただくかは、災害ボランティアセンターのオペレーションにかかっています。ですので、災害ボランティアセンターを支援するというのは、前回のadvent calendarで私が触れた「支援者の支援」の中でもうまく当たれば効果の大きな支援になります。

「何時から開きますか?」「どのような物資が必要ですか?」「自家用車でのアクセスはできますか?」といった問い合わせは、災害ボランティアセンターによく寄せられるものです。特に災害ボランティアセンター開設直後や休前日休日にはこのような問い合わせが立て続けに来て、その対応に人手がとられてしまったり、電話回線がパンクして必要な連絡ができないと言うことも起こります。今回の水害では、柴田さんがいち早く常総市の災害ボランティアセンターに入り、Facebookページを立ち上げて、ボランティアに来る際に必要となることや、ボランティアの受付方法、上に書いたような良くある質問をWebで公開しました。これによって、問い合わせの電話は激減したそうです。決して最先端技術を使っているわけではありませんが、「適時の適切なIT支援」が現場のパフォーマンスを向上させるのだということがよくわかります。シルバーウィークには毎日1000人以上のボランティアが詰めかけたそうです。守谷駅前に開設された受付所も長蛇の列となりましたが、そのタイミングでFacebookページに「ボランティアの心得」に関する読み物を掲載し、登録待ちのボランティアに読んでいただいたそうです。費用をかけて印刷しなくても、そのときに必要な情報を素早く多くの人に届けることができる、こうしたITの特長を活かした対応はすばらしいと思いました。

災害ボランティアセンター支援は、まだまだ課題もあります。作ったページや運用方法の引き継ぎはとても重要です。また、現在はできていないこととして、各地区にどれくらいのボランティアが派遣されているのかの見える化や、災害ボランティアセンターの主要な意思決定者がどこにいるのかを把握できる仕組みがほしい、といった提案もありました。

被災者の生活再建に寄り添ったIT支援の必要性

続いて、司会の畑山満則さんより、災害から約10日後の9/19-20に栃木県小山市、茨城県常総市の視察について報告がありました。

小山市災害対策本部は、市役所の被害がなかったこともあり、スムーズな対応ができていたそうですが、市役所近くの思川が破堤していれば状況はかなり違ったかもしれません。常総市は、被害が大きかったことに加えて市役所の建物も被災したことがその後の対応の遅れの一因となりました。IT支援をどこに向けて行うかを判断する際には、行政の被災状況が一つの材料になるかもしれません。

20日の常総市視察では、災害から10日たって、被災した方たちの生活をどのように取り戻すかについての課題が多くなっているということがわかったそうです。たとえば、「水が足りない」。実は飲み水のペットボトルは足りているのですが、洗濯のための水がない。そこで、被災地域の外で洗濯を代行してくれるボランティアの必要性が高まります。「・・・がない」というモノへのニーズの裏には「・・・をしたいが・・・がない」という行為へのニーズが隠れています。そこを読み取ることが大切なのだと思いました。

このほかにも、ゴミの仕分けについてなど、生活再建に向けた課題が多く出てくる時期だったようです。ゴミの処理は行政マターなので、行政と災害ボランティアセンターがうまく連携できれば、片付けボランティアにゴミの仕分け方やゴミ置き場に関する行政情報をスムーズに伝えることができるのでしょう。こういったところも、体制ができて実施となったときにはIT支援の対象となりそうです。

畑山さんからの報告で気になったのは、各避難所で携帯キャリアがWiFiを解放していたということでした。実は、災害時には各キャリアが公衆無線LANをSSIDを00000JAPANに統一して解放するという協定が結ばれています。しかし、今回は00000JAPANは発動せず、各キャリアがそれぞれのSSIDを広報する形で解放したそうです。00000JAPANに関してはガイドラインがすでに公開されているようですが、今回の水害のような場合でも積極的に運用することが大規模災害時のトレーニングにもなるのでは・・・?と思いました。

後半を寝て待て!

後半は発災から3日後の9/13に現地に入った調査チームと後方支援チームからの報告、そして、発災直後に立ち上がったFacebookコミュニティについての話題です。お楽しみに!そうそう、災害支援に入ろうと思っているみなさんは、インフルエンザの予防接種と社会福祉協議会のボランティア保険への加入を忘れずに!