情報支援レスキュー隊 / IT DART (Disaster Assistance and Response Team)

2015年9月19日〜9月20日 小山市および常総市情報支援ニーズ調査

目的

今後の活動に役立てるためのITおよび情報支援ニーズを把握し、現時点でできる支援はないかを確認すること

概要

9/19(土)

畑山と斎藤にて、小山市にて調査。小山市は、床上932 床下593と、常総市についで家屋被害の多かったところだったこともあり、また、あまり情報もなかったので、こちらの実情を伺うことにした。

まず、小山市役所・資産税課長 飛坐(ひざ)氏と面会、小山市における被災状況と市の対応状況を伺った。その後、地元のシステム会社の方にご案内頂き、被災地域を見せて頂いた。

既に震災から1週間たっていること、また、地域が限定されていることもあり、かなり落ち着いた状況で、被災地域を除けば、催し物や店舗の営業など、普通通り行われている。ボランティアの受け入れも地元でまかなえる状況らしく、「経験者のみ」に限定し、積極的な受け入れは行われていなかった。

市役所は、休日ながら多くの職員が、各種相談や手続きのために仕事をしていた。
小山市では、被災直後の9/10より9/14にかけて、市職員全員(約1000人)が、被害調査を実施している。これは、罹災証明発行の基礎資料となるもの。特に水害の場合は、被害状況がすぐに分からなくなることもあり、直ちに対応することの意味は大きい。なお、調査には添付調査票(紙)で行われており、訪問した9/19、資産税課の職員が、集めた調査票のデータ入力を行っていた。

表の調査項目は、通常どおりの項目ではあるが、裏面は、小山市の独自の工夫で、専門的な知識がなくても直感的に評価できるようにと配慮から付け加えられたもの。

調査票

調査票裏面

避難所は、9/19現在3箇所・避難されている方は56名。

市役所訪問後、被災地を見たが、ゴミ出しや片付けが行われているところが多かった。ただ、水につかった痕跡は随所にあったものの、建造物の破壊に至るような損傷は見受けられなかった。

被災地
小山市の水害は、川の氾濫や堤防の決壊ではなく、大雨のため土地の低い地域で排水ができず水が溜まってしまったことが、原因のようだ。ただし、思川の支流に当たる小さな河川では破堤しその周辺は床上ならびにコンクリートブロックの塀が壊れていた。

被災地
小山市調査の後、小山駅より水戸線に乗り、常磐線・友部〜土浦へ向かい、タクシーでつくばへ向かう。ここで、一般社団法人協同プラットフォームのミーティングに参加し常総市の被災状況や県、市、VC等の支援状況などについて話を伺う。

一般社団法人協同プラットフォームのミーティング
その後、土浦に移動し宿泊。

9/20(日)

9:00 常総市役所に到着。市役所にてIT DART運営員で茨城県広報監・取出氏、および理事の上村氏と合流。すぐに県災害対策本部@旧NTT東日本水海道にて、茨城県理事・政策審議監の今瀬氏と情報共有。その後、石下総合体育館の避難所を訪問。なお、避難所は、9/20現在28箇所・約100名が避難されている。

昼食の後、常総市社会福祉協議会の災害ボランティアセンター、水海道駅そばのVCサテライトを訪問し、話を聞いた。

最初に訪問した常総市役所@水海道も浸水地域で、おおよそ以下のような状況。指で指し示しているのは、浸水の高さ。

浸水域
ごみ処理

ごみ処理

浸水域

石下の避難所は、県のVCも設置されており、ボランティアの受付対応もしていた。

県VCの様子。

ボラセン

ボラセン

避難所は、紙による情報の張り出しが行われており、そこに相談担当が付いて応対している。は、訪問当時の避難所には人はまばらで、天気も良いこともあり、多くは片付けに出かけている様子。

その後、常総市社会福祉協議会のVCを訪問、全国からボランティア団体のメンバー、全国社会福祉協議会からの派遣メンバーが多数詰めて作業をしていた。場所は中妻、電気は来ているが断水状態が続いている。

VCスタッフの人数がかなり多く、各自動いてはいるが、話を聞くと、内部での情報共有やタスク・マネージメントは必ずしも円滑ではないようだった。

泥出しや片付けなどの現場活動は、被害状況に応じて、8箇所に地域を分け、各被災地で経験を積んだベテランのボランティアが仕事の振り分けを行っていた。

ボラセンの様子

ボランティアスタッフの振り分け

 

ただ、この日は、過去最多2700名ほどのボランティアが来たこともあり、うまく分担を理ふることができなかったようで、朝2時間、あるいは午前中一杯またされてやっと作業を割り振られたという人もいたようだ。

現場作業の采配をしているベテラン・ボランティアによると、「被災家屋は広範であり、高齢者も多い。まだ支援ニーズは多く、対応には人手がいる。秋の台風シーズンが来る前に対応を終わらせておかないと、被害が拡大することも考えられ、時間との勝負になるだろう。シルバーウイーク以降、人が空くなるなることも予想され、どうやってボランティアを集めるか、課題になる」とのこと。

所感

災害時になると行政やVCにて直ちに必要になるシステム・ニーズはいくつかありそうだ。例えば、小山市が行った被害調査はもしスマホでやっていれば、その後の集計も不要で、写真も添付できる。ただ、このようなシステムは普段使用しないので予算が付かない。このようなニーズに対応できるツールを用意しておくニーズは高い。

また、協同プラットフォームが使っていたeコミおよびeコミマップは被災者や支援者に情報を提供するツールとして情報がうまく整理されていた。運用をどうするかの課題は残るが、このようなツールは是非とも常備しておきたい。

災害VCのホームページは、今回、柴田理事が自身の取り組み「災害IT支援ネットワーク」の取り組みとして立ち上げたものだが、VCの運用現場がうまく機能しておらず、有効に活用されてはいなかった。できれば、こういうところにIT DART隊員が支援に入り、支援することも必要だったかもしれない。

いずれにしろ、今回は、IT DARTより6名が現地に入り、いろいろと見聞きしている。すこし落ち着いたところで、しかし、早い段階で、振り返りと情報共有、今後の災害対応についての具体的なオペーレションについて議論すべきであると考えている。

なお、県・今瀬審議官との会話にて、県としても振り返りと今後の対応を検討したいと言う話もあり、こういう取り組みにIT DARTも参加させて頂きつつ、行政との連携・信頼関係を築いてゆくべきではないだろうか。

以上