情報支援レスキュー隊 / IT DART (Disaster Assistance and Response Team)

災害時のウェブページの作り方

投稿者:OikawaTakuya - 2016/12/04

IT DART運営委員の及川です。今日は災害時のITを用いた情報発信の話をします。

ウェブを中心にした情報発信

災害時のIT活用の肝はウェブです。もちろん、スマホ全盛時代で多くの人はブラウザ経由のウェブではなく、ニュースキュレーションアプリやソーシャルサービスで情報を得るようにはなっています。しかし、その経路として他アプリやサービスを使うとしても、一次情報としてはどこからでも辿れる場所が必要です。それがウェブなのです。

また、ウェブには発信者側がコントロールできるという利点もあります。

スマホアプリはストア(Play StoreやApp Store)に掲載するためのGoogleやAppleによる審査があります。そのため、迅速にアプリを公開できないことがあります。アプリを更新した場合にも、いつ更新版がストアに載るかはわかりません。場合によっては、ベンダーから差し戻しになることさえあるのです。アプリはユーザーによるインストールが必要ですし、その制作の難度も考えると、災害時の情報公開のためのツールとしてはふさわしくないでしょう。もちろん、ここでの話は情報発信においてアプリを新たに制作することの問題点を話しているだけですので、すでに公開されているアプリに情報を発信する、例えば、LINEやTwitterを通じて情報を発信することなどは有効です。

ウェブに情報を掲載するに際して注意すること

次にウェブに情報を掲載するに際して注意することを説明します。

見た目よりも検索性を重視する

ウェブとしての見た目を重視するよりも、情報の見つけやすさを優先させましょう。

自治体のウェブページにありがちなのが、デザインを重視して(しかも、正直に言うと、ウェブの最先端からはほど遠いWeb 1.0とでも言いたくなるほどの旧態依然としたデザインで、とても美しいものではないことがほとんどです)、普通にテキストで書けば良いところを画像にしてしまうことです。

以前、ある自治体のハザードマップを探したとき、防災情報がどこにあるか見つけることができずに苦労したことがありました。サイト内検索をしてみたところ、ちゃんとトップページからリンクされていたのですが、そのリンクがテキストではなく、画像になっていました。しかも、その画像はただのテキストの画像です。フォントに凝りたかったのでしょうか。文字で書けば良いところをわざわざ画像にして見つけにくくしてしまったのです。

災害時にはちょっと余分に時間がかかるだけでも、大問題になりえます。見た目のちょっとした美しさに凝るよりも見つけやすさを大事にしましょう。

適切な1ページの分量を考える

ウェブページ1ページ分の分量を適切なレベルにしましょう。

ウェブはリンクにより情報をつなぎ合わせるハイパーリンクが特徴です。しかし、あまりにも細切れに情報を分割すると、すべての情報を把握するために何度もリンクをクリックし、異なるウェブページを表示しないといけません。

一方、1ページの分量が多くなると、今度はページの表示に時間がかかりますし、なにより1ページの中から必要な情報を見つけ出すのが難しくなります。

伝える情報として意味のある塊は1ページにまとめることを前提とし、分量があまりにも多くなる場合には分割することを考えると良いでしょう。

画像はダイエットしてから掲載する

画像を掲載する場合は、サイズを減らしましょう。

1つの画像はテキストだけの場合と比べ、多くの情報を伝えられます。災害時にも、地図や被害状況など、重要な情報を画像で発信することも多いでしょう。

その際に気をつけて欲しいのが、(ファイル)サイズです。意識しないまま画像を掲載すると、ダウンロードに時間がかかりますし、回線状況によってはダウンロードに失敗してしまうこともあるでしょう。今ではOS標準のツールで簡単にファイルサイズを縮小できますので、画像は適切なサイズにダイエット(圧縮など)してから掲載するようにしましょう。これは平時からプロセス化しておくことが本当は望ましいです。

画像のファイルサイズ以外も含む、ウェブページのパフォーマンス診断は、Mobile Website Speed Testing Tool – GooglePageSpeed Insightsなどで行うことができます。少し技術的な内容になりますが、一度診断してみる価値はあるでしょう。どちらも、課題に対しての解決策も提示してくれます。

重要な情報にはURLでたどり着けるようにする

重要な情報には個別のURLを付与するようにしましょう。

災害時にはウェブに情報を掲載するほうが良いとお勧めしていますが、実際に人々が手にするのはブラウザ経由とは限りません。冒頭でも説明したように、LINEを通じて情報を入手することはあるでしょう。ただし、その際にも一次情報をたどるために、その情報が掲載されているウェブページのURLを付与する必要があります。どんなときにも、URLとともに情報を発信する。これを標準化することをお勧めします。

このURLですが、ウェブページ全体として1つ決められてはいますが、先ほど説明したように、ある塊の情報が1つのウェブページに記載されているとすると、その塊の中の一部を示したいことも出てきます。その場合は、その特定箇所を示すURLを持つようにしていると良いでしょう。これはaタグのname属性やidタグで行うことができます。

また、ページ内の情報が多い場合、アコーディオンパネル(またはCollapse/Expand)という表示方法を使うことがあります。これは、クリックすることで、隠蔽されている情報が表示されるもので、アコーディオンのひだのように、伸びたり縮んだりするので、このように呼ばれています。

このUIは情報の一覧性と情報量を両立できるという利点があるものの、アコーディオンパネルで隠された情報に到達することが難しくなるというトレードオフが発生します。特に、LINEやTwitterなどで共有したときなど、共有された側からは、いったいどこにその情報がわからない、迷子状態になってしまうこともあります。この場合も、その情報にURLを付与することで解決できます。


以上、災害時にウェブを通じて情報を発信する際に気をつけて欲しいことを説明しました。
細かいテクニックは他にもいろいろとありますが、発信する側の都合ではなく、受けとる側の利便性を考える。そうするだけで、いくつもの改善ができることでしょう。