情報支援レスキュー隊 / IT DART (Disaster Assistance and Response Team)

災害ってなんだっけ?

投稿者:SatoDai - 2016/12/05

この記事は「防災・減災 Advent Calendar 2016」の5日目の記事です。

IT DART 代表理事の佐藤大です。
「災害ってなんだっけ?」と言われると「ポン酢しょうゆがあるうちさ」と繋げたくなりますが、むしろポン酢しょうゆが無い状態が災害です。

今年発生した災害

2016年は、災害の多い年でした。
4月には14日と16日の二度にわたり震度7を記録した熊本地震が発生しました。6月16日の内浦湾を震源とする地震では、函館市で震度6弱を記録しています。6月20日頃には梅雨の大雨で、熊本県で6名の死者が出た他、広島県を中心に各地位で家屋が浸水等の被害を受けました。また8月には「三つ子台風」が発生しました。21日には台風11号が北海道に上陸し、翌22日には台風9号が千葉県に上陸、さらに台風9号は23日に北海土に再上陸し、埼玉県や茨城県と北海道各地に豪雨をもたらしました。また遅れて30日に岩手県に上陸した台風10号では、岩手県と北海道の各地で大規模な水害や土砂災害が発生しました。そして10月21日には鳥取県中部地震が発生。さらに11月22日には福島県沖を震源とする地震による津波が、福島県や宮城県の沿岸部に押し寄せました。
(ずらずら書いてみたらホントに多かった)

消防庁の災害情報一覧を見ると、この他にも、軽井沢での観光バス横転事故(1/15)、広島でのトンネル内車両火災(3/28)、羽田空港での大韓航空機火災(5/27)、相模原での障害者施設殺傷事件(7/26)、埼玉県での地下電力ケーブル火災(10/12)等が掲載されています。

最初の段落に並べたのは地震や台風などの自然災害で、この部分は多くの人がごく自然に「災害だなぁ」と受け取れると思います。が、消防庁の災害情報一覧には事件、事故、犯罪まで含まれていて「それって災害なの?」という違和感を持つ人も多いのではないでしょうか。

「災害」の定義

じゃぁ「災害」ってそもそも何なんですかね? とりあえずググってみると…。

災害 – Wikipedia 

災害(さいがい、英:disaster)とは、自然現象や人為的な原因によって、人命や社会生活に被害が生じる事態を指す。
(中略)
「災害」と呼ばれるのは、人間に影響を及ぼす事態に限られる。例えば、洪水や土砂崩れが発生しても、そこにだれも住んでいなければ被害や損失を受ける者は出ないため、それは災害とは呼ばない。また「災害」という用語は多くの場合、自然現象に起因する自然災害(天災)を指すが、人為的な原因による事故や事件(人災)も災害に含むことがある。通常は、人間生活が破壊されて何らかの援助を必要とする程の規模のものを指し、それに満たない規模の人災は除かれる。

コトバンク

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

一般に,人間社会が予想できなかった原因,経過によって,個人または個々の集団が,元の生活や生産活動への回復不能,あるいは回復困難な損害を受けること。災害対策基本法では「暴風,豪雨,豪雪,洪水,高潮,地震,津波,噴火その他の異常な自然現象又は大規模な火事若しくは爆発その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する政令で定める原因により生ずる被害」としている。

デジタル大辞泉

地震・台風などの自然現象や事故・火事・伝染病などによって受ける思わぬわざわい。また、それによる被害。「不慮の災害」「災害に見舞われる」

サイトによって書き方はそれぞれだし、説明の粒度もバラバラですが、ざっとまとめると、

  • 人間の生活にダメージが出る
  • その回復のためにサポートが必要
  • 発生が予定されていない
  • 原因が自然現象か人為的かは問わない

という感じでしょうか。予期せず生活サポートが必要な人が発生した状況を災害と呼べるようです。直感的には自然災害が「いかにも災害っぽい」災害ですが、まぁ確かに、原因が自然現象だろうが事故だろうが「生活サポートが必要」という状況には変わりがありません。避難したり、近隣住民で助け合ったり、救助や復旧支援など、いわゆる自助・共助・公助が動くのも同じです。
ただし災害対策基本法では、原因が自然現象や火事・爆発などに限定されてます。これは、犯罪や戦争行為の場合は他の法律が適用されるからでしょう。

災害医療における「災害」

災害医療における災害の定義はシンプルです。「医療ニーズに対して医療リソースが不足している」状態で行われるのが災害医療です。災害医療では全ての受診者に十分な対応をするのは不可能なので、全傷病者へのトリアージによって重症度の高い人を選定して優先的に治療するし、完治を目指さず後方への搬送に耐えられる程度の処置を行って被災地外へ送り出すこともしばしばあります。
例えば地震などの自然災害で傷病者が多発しても、その地域にそれを上回る医療リソース(搬送手段、病院のベッド、医師、看護師、医薬品など)があれば通常の救急医療として十分な対応ができるし、一方で医療施設が少ない地域では、ちょっとした事故が発生するだけで災害医療モードになります。医療を提供する側の動きが災害モードに切り替えるかどうか、というアクションに直結した、非常に分かりやすい定義だと思います。

再び「災害」の定義

災害医療の話における医療の提供を生活サポートの提供に読み替えると、一般的な「災害」もほぼ同じ定義で良いんじゃないかと思います。つまり「生活サポートのニーズに対して対応リソースが不足している」状態で行われるのが災害支援ということになります。十分な対応リソースがない以上、全てのニーズに応えることはできないので、いわゆる災害弱者や生活へのダメージが大きい人を優先して支援したり、場合によっては被災地外への避難を支援したり。

大規模な災害においてこういった対応を的確に行うには、医療におけるトリアージと同様に、できるだけ早く被害状況の全体を把握し、時間的猶予が少ないニーズをピックアップする必要があります。…と言うだけなら簡単なのですが、実際には大規模災害時の状況把握は、とにかく大変です

一方で、ごくごく局所的には「生活サポートのニーズに対して対応リソースが不足している」状態は、しばしば発生します。両手に荷物を持っててドアが開けられないとか、目的地への行き方が分からなくて途方に暮れるとか、点字ブロック上に物が置いてあって前に進めないとか。大規模災害への支援は何かとカッコイイんですが、こういう「プチ災害」への支援も忘れられずにいたいなと思ってます。