情報支援レスキュー隊 / IT DART (Disaster Assistance and Response Team)

被災者の「困りごと」と「ニーズ」のあいだ

投稿者:MiyagawaShoko - 2017/12/02

この記事は『防災・減災 Advent Calendar 2017』の 2日目の記事です。

 


こんにちは。IT DARTの宮川祥子です。

今年も国内外でいろいろな災害がありました。九州北部豪雨災害には多くの注目が集まりましたが、それ以外にも秋田県では8月の大雨と9月の地震、鹿児島県では新燃岳の噴火、年頭には大雪被害や、栃木県での雪崩もありました。これらの災害で被害を受けた皆様には、心からお見舞いを申し上げます。

九州北部豪雨災害では、福岡県と大分県に大きな被害が出ており、まだ1000人以上の方が避難生活を送っています。全国から集まったボランティアが、住宅の復旧だけでなく、農作物の手入れや収穫などの支援も行っています。防災・減災というと、まずは命を守ることを考えますが、その後のひとりひとりの日々の暮らしを立て直していくこと、そのことをお手伝いすることも大切なテーマなのだと改めて感じます。

ところで、私は情報系を専門にしていますが、システムのことにはあまり詳しくなく、どちらかというと、組織が意思決定のプロセスの中でどのような情報を活用しているのかに関心を持っています。この視点で防災・減災を見ると、医療や行政の現場とは違う部分が見えてくることもあります。今日は、そんな話をちょっとご紹介したいと思います。

IT DARTは「全国災害ボランティア支援ネットワーク(JVOAD)」という団体のメンバーになっています。JVOADは、災害が起きたときに、支援活動が一極集中したり、必要な支援が届かないという問題を解決するために、災害復旧のために活動する団体間の連携・調整をおこなう団体です。IT DARTは、支援団体がいつ、どこで、どんな活動をしているのかという支援状況を「見える化」するためのシステムを作って、JVOADの活動をサポートしています。

この「見える化」システムを作るプロセスのなかで、いろいろな団体の意見を聞く機会があったのですが、そこではたと気づいたのが、今日のタイトルにある、被災者の「困りごと」と「ニーズ」のあいだ、です。

連携・調整をうまく行うためには、どこにどんな支援ニーズがあるのかを把握して、共有することが大切になります。たとえば、土砂が流れ込んだ家の泥出しを行っているボランティアが、その家の人から「寝たきりの家族がいるのでなかなか出かけられず、罹災証明が取れない」という話を聞いたとします。こんな時に、泥出しを専門とするボランティアがこの家の方を直接サポートすることは難しいでしょう。でも、この状況を別のボランティア団体にうまくつなぐことができれば、そこから必要な支援を行うことができるようになるかもしれません。

ところで、上のケースでの、「ニーズ」とは何でしょうか。一見すると、「罹災証明を取るためのサポートをする」「役所までの車の送迎」がニーズとして現れていますが、その裏には「要介護の家族がいて、本人も家族も外出がままならない」という「困りごと」があるようです。たとえ役所までの車の送迎をしたとしても、そのほかにも、「お風呂に行けない」「買い物ができない」「集会でみんなと話すこともできない」などの様々な問題は解決しないで残されたままになってしまうかもしれません。

被災した方々の生活再建を支援する、という目線で考えると、当面の課題である「罹災証明を取る」ことのサポートの他にも、ケアマネージャーにつないで介護などのソーシャルサポートを受けられるようにする、など、「困りごと」を解消するためのアプローチも必要になってきます。くわえて、「ニーズ」はそれを満たせば良いのですが、「困りごと」の解決は一筋縄ではいきません。「要介護の家族がいるなら介護サービスにつなげればいいんだよね」と定型的に考えるのではなく、その家族がこれからどのような生活をしたいかを知って、教科書的に最善ではないかもしれないけど、一番納得感のあるアプローチを一緒に考える、ということが必要になってきます。

ちなみに、私はこういった「困りごとを寄り添って解決する」のはどちらかというと苦手です。私だけでなく、IT系の人は苦手な人が多いんじゃないかという印象を受けています。でも、苦手なら苦手で良いので、得意な人にうまくつなげられれば(例:「あ、保健師さーん、ちょっと気になってるお宅があるんですけど−」)いいのではないかと思っています。抱え込まずに連携、ですね。