情報支援レスキュー隊 / IT DART (Disaster Assistance and Response Team)

災害とトイレの話

投稿者:MiyagawaShoko - 2016/12/02

公共財としてのマンションのマンホールトイレに公的補助を!

 

情報支援レスキュー隊 IT DART理事のみやがわです。こんにちは。

2016年3月に、国土交通省から、災害時における快適なトイレ環境の確保に向けて、マンホールトイレ普及のためのガイドラインが発表されました。

http://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sewerage/mizukokudo_sewerage_tk_000411.html

 

災害時のトイレって大切ですよね。食料や水のことは気にしている人も多いかと思いますが、人間というのは入れれば出るもの。トイレ環境が整備されていないと、水の摂取を控える→水分が足りなくなって脱水、というヘルスリスクがあります。特に高齢者は血液がどろどろになることで脳梗塞になるリスクも高まります。

このように災害時のトイレを考えることはとても大切なのです。そこで今日は集合住宅に住む、いち住民の視点から、このことを考えてみようと思います。

実は、今年の2月末までの1年間、マンションの管理組合理事長を務めていました。うちのマンションは防災マニュアルが整備されていなかったため、整備に手を着けたり、住民の防災意識向上のための講演会を開催、防災お便りの配布などの取り組みをしてきました。今年は、予算をつけて、いくらかの防災食もそろえています。

そして、現在でも解決できていない大きな課題の一つがトイレです。実はわがマンションでもマンホールトイレの導入を検討しましたが、最終的には採用しませんでした。それは、決してマンホールトイレが利用しにくいからではありません。

マンホールトイレの整備にはお金がかかります。うわものだけでなく、下水の整備を必要とするので、数100万円の出費が必要となるでしょう。そして、その出費には、マンションの住人が拠出した管理費や修繕積立金が使われます。

ところで、実際に災害が起こったとき、そのマンホールトイレを使うのは誰でしょうか。マンションで買ったマンホールトイレだから、マンションの住人だけが使う。このような運用が実際に可能でしょうか。もしそんなことになったら、周囲の住民から「あそこはトイレがあるのに使わせてくれなかった」と言われるでしょう。このような遺恨は、その後のコミュニティの復興にとって致命的なダメージとなります。

では地域の住民に開放すべきか。でも、このトイレはマンションの人が少なくない費用を負担して整備したマンションの資産です。マンホールトイレがあれば地域の住民がみなそこを使うでしょう。地域の住民のために、資金を拠出したマンションの人が長時間並ばなければならない?掃除は誰がするの?トイレットペーパーは?メンテナンスが必要になったときの費用は?

マンションの資金で整備したマンホールトイレ、災害時にオープンにしてもクローズドにしても、その後のコミュニティに禍根を残します。このような結論にいたって、当面、マンションでマンホールトイレを整備することは難しいだろうと、断念しました。でも、これは、マンションにとっても、地域全体から見ても、決して最良の選択ではありません。

防災に関わる人間としてマンションの運営を行いながら、災害時のトイレのことだけを考え続けてきたと言っても過言ではありません(笑)。そんな「トイレ理事長」であった私からの提言は、

「マンションでマンホールトイレを整備する場合、災害時にトイレを地域に開放することを条件に整備費用を補助する」という国・自治体の予算化

です。リンクにあるマンホールトイレ普及のガイドラインは、学校などの公的施設での整備を前提としていますが、公共施設のマンホールトイレの整備には一定の条件で補助もあるようです。しかし、少子化が進み学校が統廃合されて数が少なくなる一方で、集合住宅のマンホールトイレへの補助はまだありません。補助によってマンションのマンホールトイレの整備が進めば、地域全体のトイレ整備率が高まります。トイレの共有を通じて、地域の助け合いのつながりも生まれるでしょう。地域のつながりは、大きな災害に遭った地域のその後の復興にも寄与します。このような税金の使い方、いかがですか?