災害支援の現場からITエンジニアさんに期待すること
※この記事はIT DARTアドベントカレンダーという、12月25日までのブログリレーの4日目のものです。
情報支援レスキュー隊の上村です。及川代表理事の記事を受けて、本日は、災害支援の現場からITエンジニアさんに期待することというお題です。
私自体、東日本大震災後に、いくつかの災害支援団体でコーディネーターとして、所属団体内の情報支援やネットワーク環境の整備、ウェブサイト作成などに関わってきました。そこでの後方支援本部や現地災害ボランティアセンタースタッフの視点から、どのようなIT支援だと受け入れられやすいのか、「支援先に寄り添う・現場に負担をかけないIT支援」という視点で考えてみたいと思います。支援先は、現地NPOや避難所、行政等ありますが、今回は災害ボランティアセンターを取り上げます。
現地の災害ボランティアセンターに受け入れられるには
こちらは、茨城県常総市の災害ボランティアセンター(災害VC)での運営の様子です(関係NPOによる共有会議)。災害ボランティアセンターは、被災地での自助・共助能力を超えたニーズ(庭や家屋内の泥かきなど)を集め、地域や全国から集まってきたボランティアさんとを結び付ける(マッチング)機能があります。一般的には、災害時に市町村などの要請を受けて、市町村社会福祉協議会(社協)が設置運営します。災害規模によっては、外部のNPOやほかの地域の社協などを応援を得て、運営する場合も多いです。
この写真のように、地元社協が職員が少ないなか初めて運営することになり、また多くの支援団体と協働して支援する場合、重要なことは以下と感じています。
- 支援先との日頃からの信頼関係/支援先が関係している団体からの紹介がある
- 自分たちのやりたいことではなく、相手先のニーズにあった支援を提案できる
- 最新技術の導入ではなく、支援先スタッフが慣れているツールを組み合わせることができる
実際、IT一つとっても、色々なお話や売り込みに近い申し出も多いのですが、現場サイドで使えない、または、最終的に引継ぎのできない(最後までスタッフを送るなど支援するなら別ですが)ようなものも多いのも確かです。
常総市災害VCでの情報支援
いわゆる狭義のIT支援には当てはまらないかもしれませんが、シルバーウィーク中の情報発信支援についてご紹介します。
シルバーウィークの課題
シルバーウィーク中は、常総市社協災害VC、県VCは、合同でのボランティア募集・受付とし、守谷駅よりシャトルバスも多数用意した(右写真の通り、また9月中は2つの災害VCが立ち上がっていた)。
- シルバーウィーク中は、連日1500~2000人レベルのボランティアの来所が見込まれた
- それに伴い、変更される受付方法などの質問が多く寄せられる可能性があった
- また、予想される待ち時間の長時間化に対応する必要性もあった
シルバーウィークの課題への対応
それに対して、以下の対応を取りました。
- 予想される質問には、FAQ(よくある質問)を予めホームページに掲載
- 電話による問い合わせにも、多く寄せられる質問には随時更新していった
- また、待ち時間の読み物として、災害ボランティア向けのオリエンテーション資料をSNSで連載形式で掲載した
結果、ボランティアさんからの問い合わせ数が激減。3000人レベルの受付数でしたが、一時期、問合せの電話が途切れる状況にもなりました。
※こちらのは、IT DARTの理事でもあり、(一社)災害IT支援ネットワーク代表の柴田哲史さんのご紹介による協働での活動です。
災害IT支援活動に必要な人材とは
このような経験を通じて感じることは、
「現場とIT技術者をつなぐ、通訳・翻訳者が必要」
というものです。IT技術者の方から言われるのは、「ディレクションしてくれる人が欲しい」というもの。要件定義一つとっても、支援現場感覚から、支援先のニーズの行間を読み、それを適切に伝える能力というのは、とても重要だと思います。また、「ITに関してお困りごとはないですか?」だけだと、なかなかニーズを拾えない、こちらから課題を発見して提案していく、それも相手のやり方を十分尊重して行う必要があります。
例えば、災害VCで使う様式(ボランティア受付簿など)一つとっても、エクセルで印刷使用メインで手書きを考えていたものが(いわゆる方眼紙レイアウト)、実際はデータをペーストして印刷することが多かった場合、ペースト自体がうまく行かないこともあります。また、同じセルに、ふりがな情報も入っている場合もあります。しかし、この様式そのものを変えるのではなく、別シートで入力しやすいフォーマットにして、そこにデータを流し込み、そのデータをオリジナルの様式に表示させるという改良を提案する。支援先としては馴染んでいる様式のまま、作成する側の利便性も向上できるという解決策もあります。
また、先ほどのシルバーウィークの例でも、ボランティア問合せ担当の携帯電話の履歴から、どれくらい問い合わせが減ったのかなどを解析することも出来るかと思います(現場ではなかなか記録を取る余裕がない)。
IT技術者が災害VCを学んだ方が早いのか、災害VC運営を担うものがITを学んだ方が早いのかは、いつも議論になりますが、いずれにせよ、間をつなぐ人の存在は、ますます重要になっているのかなという印象を持っています。
現場と上手くかみ合う活動を目指して。ぜひ、情報支援レスキュー隊(IT DART)で(いや、限りませんが)ご一緒に活動できましたら。