情報支援レスキュー隊 / IT DART (Disaster Assistance and Response Team)

災害対応で業務効率を上げよう!

投稿者:SatoDai - 2017/12/08

この記事は『防災・減災 Advent Calendar 2017』の 8 日目の記事です。


またもや IT DART の佐藤大です。
前回の「災害情報はどこで見る?」はほぼリンク集でしたが、今回はちゃんと文章です。

今年度から災害が本業になりまして、職場で災害対策のあれやこれやをやっています(といっても、そういう部署があるわけではなく、担当者は一人だけです)。その中で、非常に悩ましいのが災害対応の教育です。どうすればいいのかなぁ。

「災害」について学ぶのは、割とイメージしやすいんですよ。

まずは災害の原因となりうる現象についての知識を得る。例えば地震や津波、河川の氾濫、土砂崩れ、火山の噴火などについて、どれくらいの規模で何が起こるのか、原因や発生条件は何か、発生前の予測は可能なのか、建物や道路などにどういう影響があるのか、…といったあれこれですね。
あと自然災害だけではないので、事故やテロの想定も必要かも知れません。この場合、CBRNE(Chemical, Biological, Radiation, Nuclear, Explosion: シーバーンと読む) という略称で呼ばれる化学、生物、放射線、核、爆発も対象になりますが、まぁ必要な知識はだいたいイメージできます。

そして、それによって生活にどういう影響があり得るかを把握する。建物への影響、道路や鉄道への影響、電気水道ガス通信などへの物理的な影響が分かると、それによって生活がどう変化するかは(ちょっとややこしいけど慣れれば)だいたいの想像はつきます。どういう種類のケガ人や病人がどれくらいの規模で発生しそうかも、いろんな被害想定資料から読み取ることができそうです。

これらが分かってくると、「防災」についても何をしておくべきなのか様子が見えてきます。建物の耐震化となると金も時間もかかるので実行できるかどうかは別問題ですが、家具の転倒防止とか、耐火防炎のあれこれとか、水の侵入を防ぐための土嚢とか、やれることがいろいろと見つかります。また生活環境確保のために、食料や水の備蓄、懐中電灯やラジオ、これらを持ち歩くための非常持ち出し袋なども準備した方が良さそうですね。

もう少し別の角度から「防災」を見ると、非常時の行動マニュアルを準備しておくというのもあります。グラッと来たら机の下に潜り、揺れがおさまったら○○小学校の校庭に避難!なんてのがそうですね。職場の災害対策マニュアルだと、さらに人員の点呼とか、業務用装置の点検なども加わることでしょう。大きな組織だと、災害対策本部を立ち上げて…なんてのも入るかも知れません。マニュアルを作ろうと思うと、確認することや調整が必要なことが多いですが、チームを作って数ヶ月頑張れば、とりあえずそれらしい物にはなりそうです。

はい。ここまでで「災害」についての知識はある程度つきました。「防災」についてもいろいろ準備したので、あとはマニュアルの通りに「災害対応」を実行するだけですね!

…というところまで来て、一気に悩みが増えます。

組織の中で「災害対応」を実施していると、さまざまな判断を求められます。いろんな課題が一気に押し寄せたけど、まずはどれから片付けるのか。AさんとBさんの要望は両立しないけど、どっちを却下するのか。この対応は今やるべきか、それとも後でやった方が良いのか。人手が足りなくて全部の作業はできないけど、どれを諦めるべきか。

普段だったら判断に迷ったら上司に相談するところでしょうが、未経験のことが次々と起こる中で皆がそれをやると、あっという間に上司がパンクしそうです。そしてきっと、その上司もまた、同じように判断に迷ってることでしょう。こうなると、重要な問題はともかく、ちょっとしたことは即断即決で自分で進めていかなければなりません。

さて。

  いろんな問題の中から、どれを重要な問題だと思えば良いでしょう?
  また、その他の問題は何を基準に判断すべきでしょう?
  さらに、即断即決してもらうためには、どういう教育が必要でしょう?

この辺がなかなか難しいんですよね…。

災害対策訓練の中で鍛えるというのは一つの解かも知れませんが、訓練はそんなに頻繁にできないんですよね。年に1, 2回だけの訓練で、判断力が大きく向上するとは思えません。

そうすると、残るは普段の仕事です。判断力を必要になるような仕事の進め方に、普段から慣れておいてもらうしかないのかなと。具体的には、独立性がある程度高い業務を丸ごと担当者に任せて外部影響が無ければどんどん判断して進めてもらうとか、打合せで「後ほど検討します」で済ませずにその場で(もしくは〆切を決めてそれまでに)決断してもらうとか、相談するにも判断に必要な情報を揃えて論点を明示するとか、決めたことをすぐ担当に伝えて実行してもらうとか、そういうことですね。

で、これって結局、プロジェクトを効率よく進めるためにマネージャーがやることそのものです。つまり、災害対応を意識して仕事をすることで、普段の業務効率が大きく向上するはずなんですよ。これは本来の業務を遂行する上でもとても役に立つので、推進すると良さそうですね! よしやろう!!

…とは言うものの、職場の仕事文化を変えるってことなので、かなり腰を据えてかからないとけません。道は長い。少しでも効率の良いやり方をご存知の方は、是非とも教えて下さい。