情報支援レスキュー隊 / IT DART (Disaster Assistance and Response Team)

支援団体の支援も大事な支援です

投稿者:MiyagawaShoko - 2015/12/09

IT DART Advent Calendarを見に来てくださったみなさま、こんにちは。IT DART代表理事の宮川です。

さかどんの昨日のAdvent Calendarに書いてあった「Web系実装できない」ほうのクラスターです。大学で健康情報学を教えながら、仲間たちとITを活用した災害支援に取り組んでいます。好きな言語はPrologとLISPです。

さて、今日は、東日本大震災で私が実際に行ってきたIT支援の経験から、災害時のIT支援について書いてみたいと思います。

ITを活用した災害支援、というと、避難所にネットワークや PCを届けたり、被災した人たちが直接使えるようなサービスの開発につい目が行きがちです。このような直接支援は、わかりやすいですし、被災者の役に立ったという実感も得られます。でも、直接支援以外にも、ITが活躍できる場所はあるのです。

ITをうまく使えた分野、うまく使えなかった分野

災害時のIT活用の可能性として、次のようなものが考えられます。
・Publication(広報)・・・避難勧告や災害発生の状況を素早く多くの人に伝える
・Communication(連絡)・・・被災状況や支援の必要性などを行政や支援団体などに伝える
・Logistics/Decision Support(後方支援・意思決定支援)・・・物資や医療などの支援リソースをどのタイミングでどこに投入するかの意思決定を支援する

東日本大震災の際にも多くのメディアで取り上げられた、FacebookやTwitterなどのSNSを使った被災情報の伝達はCommunication (連絡)にあたります。東日本大震災以降、このような災害情報の共有のためにSNSを使うとケースが多く見られるようになりました。行政もこれに着目して、自治体のツイッターアカウントを作って災害関連情報をPublication(広報)するようになりました。時には、行政のTwitterで拡散されたURLにアクセスが集中してWebサイトがダウン。。。なんていうことも起こっていますが、いろいろな事例を積み重ねながら、ノウハウを蓄積していってほしいなあと思います。GoogleのPerson Finderも、被災者の状況を伝えるという意味ではPublicationに分類されます。

ところで、3つめのLogistics/Decision Supportについてはどうでしょうか。残念ながらこの分野は、こと災害支援においては遅れているようです。amazonのほしいものリストを活用した個人ベースの支援など、クラウド的(Cloud or crowd)なサービスがいくつかみられた一方で、この分野で、被災地で活動する支援団体が活用できるようなツールやサービスは決して多くは無かったなあ、というのが実際に被災地でIT支援を行ってきた私の感想です。

IT支援とニーズのミスマッチ

実は、東日本大震災発生後、サイボウズやSales Forceをはじめとする多くのソリューションプロバイダが、自治体や支援団体で使うためのサービスを廉価あるいは無償で提供するという支援を行っていました。一方で、被災地で活動している団体はどうだったかというと、ITを活用して物資の整理をしたい、ボランティアの日程調整をしたい、被災者のニーズをまとめたい、などの様々なニーズがありましたが、一方でデータベースやグループウェアなどの支援サービスを有効に活用できた団体は決して多くはありませんでした。

このミスマッチの原因の一つは、そのような支援があるということを知らなかったことです。では、支援をまとめたディレクトリがあれば解決するでしょうか。残念ながらそうではありません。組織のマネジメントや意思決定を支援するツールの導入は決して簡単ではありません。どのように使えば良いか、何に使えば活動のパフォーマンスが上がるのかを判断するためには、専門家の支援が必要なこともあります。単にツールを提供するだけではうまくいかないのです。私が支援団体を対象に行った調査では、ツールを活用してシステムを構築するIT担当者がいない、IT担当者のスキルが足りない、サービスのユーザとなる一般のスタッフのITリテラシーが十分でない、といった課題があることが明らかになっています。つまり、現場で活動する支援団体をITで支援するボランティアというのは、多くの団体にとって、とてもとても役に立つ支援になり得るのです。

涙をのんで次善の策を採る

現場で直接被災者を助ける人たちが、できるだけ効果的・効率的に活動できるよう支援することを、被災者に直接IT支援を行う直接支援に対して「間接支援」と呼びます。間接支援は、今後の大規模災害でも重要になってくることの一つです。このような支援を上手に行うためには、「これが必要にちがいない」という思い込みをいったん捨てて、現地で活動する人たちのニーズを拾い上げ、彼らのキャパシティの中で実現可能な提案をすることが必要です。どんなに最先端技術を使った完成度の高いシステムを提案しても、現場のニーズに合っていなかったり、現場の人が使いこなせない、あるいは現場の人が受け入れられないシステムであっては、かえってお荷物になってしまいます。時には、「これが最善」と思う方法を捨てて、機能は半分だけれども現場のフロー変更が最小限ですむような「次善の策」を選ぶ必要もあります。

おわりに

東日本大震災でのIT支援を経験して、被災地で実際に活動している支援者のニーズと、我々「IT屋」が考えるニーズには大きな隔たりがあることに気づきました。驚くことも多くありましたが、この隔たりを乗り越えて、本当に役立つIT支援を考えていくというのはとてもエキサイティングな経験です。具体的なエピソードは、また別の回でお話ししたいと思います。被災地で活動する支援団体へのIT支援は、1の支援を10にも100にも大きくできる、レバレッジの効く支援だと言えます。ぜひ、「支援団体をITで支援する」という活動についても私たちと一緒に考えていただけると嬉しいです。隊員になって一緒に災害支援をしたい、あるいはさらに踏み込んで、会員になってIT DARTの運営に参加したいという方は、IT DARTのWebページへGo!

最後に、特に意味は無いですが、bubble sort貼っておきますね。

bubblesort(List,Sortedlist):-
swap(List,List1),!,
bubblesort(List1,Sortedlist).

bubblesort(Sortedlist,Sortedlist).

swap([X,Y|Rest], [Y,X|Rest]):-
gt(X,Y).

swap([Z|Rest],[Z|Rest1]):-
swap(Rest,Rest1).

gt(X,Y):- X > Y.

おしまい。