情報支援レスキュー隊 / IT DART (Disaster Assistance and Response Team)

Twitterと災害 前編

投稿者:MurakamiAkiko - 2015/12/06

この記事は、IT DARTアドベントカレンダー 2015 の6日目です。

 

自然言語処理の研究者でもあるIT DARTの村上明子から、Twitterによる災害を2回にわたってお届けします。本日は前編です。


 

災害とTwitter

今ではメジャーになったTwitterですが、2011年の東北の震災の時にはまだまだ一部の人が使うものでした。現在ではソーシャルメディアは一つのメディアとして認識をされていますが、その頃にはまだ内輪の人同士の交流などに使う「遊び」のツールに過ぎなかったのです。

身近な人に情報を伝えたいという思いが逆に功を奏し、鉄道の運行再開を駅から伝えたり、ある地域の様子を事細かに伝えたりなど、テレビなどの既存メディアではカバーできないような情報を私たちはTwitterから得ることができました。他のソーシャルメディアとの大きな違いは、パブリックなアカウントと鍵付きアカウントというシンプルなTwitterの仕組みにより、自分のつながっている人以外の情報を得ることがとても簡単だった、ということがいえるでしょう。リツイート(RT)によって簡単に人から人へ情報を伝える仕組みがあったということもあるかもしれません。

一方で、自治体や企業なども災害時のTwitterの堅牢さに注目しました。TwitterであればCMSなどのツールを使わなくとも、リアルタイムな情報をいち早く多くの人に伝えることができます。リツイートによる情報の拡散も期待できます。また、アクセスが集中によるサーバーダウンなども避けることができますね。(最後については、ツイートには情報を載せず、URLを添付して自身のHPに誘導しサーバーが落ちるということが未だよく起きていますが・・・)

このようなことから、2011年以降、災害とTwitterとは多く結びつけて語られるようになってきました。

災害に関係したTweetの抽出

2011年の震災の際にはさすがに大規模な災害だっただけに、私のタイムラインではほとんどが震災の内容のTweetで埋め尽くされていました。しかし、東北や関東以外の地域では夜になって深刻な被害がテレビなどで伝えられるまでは、日常のTweetが続いていたのだそうです。
では、どのようにして災害関係のTweetを見分ければいいのでしょうか。

一つはハッシュタグを用いるという手があります。ハッシュタグとはシャープ記号(#)で始まるタグのことで、これを入れておくことでTwitterの検索が容易になります。例えば #地震 とツイートの中に入れておくことで、地震に関連するTweetだとTweetする本人が明らかにしておくことができます。これを利用して被災情報を収集しやすくするため、自治体等が災害に関するハッシュタグを設定するところも出来てきました(和光市:災害時におけるツイッターハッシュタグの利用について、など)。

もう一つは、「地震」や「豪雨」など、災害に関連する用語で検索をするという方法です。TwitterのWebアプリから検索もできますし、TwitterのAPIを用いて検索し収集することもできます。無料で利用出来るTwitterのAPIですが、様々な条件があります。Twitterの提供するAPIは大きく分けてある条件下のTweetをリアルタイムで流すStreaming APIと、検索条件にあったTweetを返すREST APIの2種類があります。Streaming APIに検索語をセットして流すことはできないので、ある用語を含んだTweetを取得したい場合はREST APIを利用します。検索結果は100%だと保障はされていませんが、1秒間に数千Tweetなどされない限りは検索でほぼ全件取得することができます(一部のAPIの利用方法は明日の後編でご紹介します)。

災害の初期発見への利用

このようにして取得した災害関連に関するTweetは、災害対応として様々なところで利用されています。Twitterの速報性から、災害の初動検知に利用しようという動きもあります。

NHKはTwitterの情報からいち早く災害被害に関する情報を得るために24時間365日体制でTwitterを観察し報道に役立てるためのチームを作っています。SOLT (=Social Listening Team)と呼ばれるこのチームは、災害だけではなく事故や事件などといった事象をいち早くソーシャル(主にTwitter)から検知し、報道の現場に情報を渡しています。

国土交通省では、土砂災害の「前触れ」をつぶやきから発見できないか、という取り組みを研究し始めています(土砂災害の前兆現象把握に「つぶやき情報」活用 )。「裏山が変な音がする」などのつぶやきから、自治体が避難指示を出すための情報の一つとして利用しようというものです。また、これ以外にも火事の早期発見などを試みる研究も行われています。

今日は、Twitterと災害についてどのように災害関連のTweetを発見するか、そしてそれを利用して災害の初期発見をしようという試みを紹介しました。後編では、より深い利用方法についてご紹介する予定です。